「いきいきシニア地域貢献事業」で何を解決しようとしているのか?

DSC_0376

 横浜市では、高齢者がいきいきと生涯現役で活躍し続けられるようにと考え、施策として平成26年12月に「いきいきシニア地域貢献事業」を開始しました。

 この事業は、単に就職先を紹介することだけを目的としておらず、ボランティア活動等を含めて社会貢献・地域貢献をしながら生きがいを持って暮らしていくことを目的としており、市から委託を受けた公益財団法人横浜市シルバー人材センターが、金沢区に開設された「生きがい就労支援スポット」において、就労やボランティア、地域活動の相談や活動先の紹介をモデル事業として実施しているものです。

 モデル事業として試行錯誤をしながら取り組んでいる状況なので、色々と壁が見えてきたのではないかと思い、現状の課題を聞いてみました。主な課題としては、

・高齢者のニーズに合わせた活動先の確保が難しい

・高齢者の就労先の拡大が難しい

・ボランティアや社会参加活動へのマッチングがうまくいかない

とのことでした。

 地域活動に関する地元の声を聞くと「自治会や地域活動の担い手がなかなか見つからず、人集めが難しい」という現状の課題がある反面、「人間関係を煩わしく感じるので、あまり地域活動には踏み込みたくない」という声もあり、地域貢献のマッチングの難しさを感じています。

 また企業ベースで捉えた場合も、企業は人手不足の中、経験や実績を積んできた人材に活躍を期待したいが、現実は企業側の期待に応えられる高齢者が見つからないといった声もあります。

 現在、このモデル事業が直面している課題はまさに現状課題そのものであり、解決することで、地域課題や就労の解決にも結び付いていくと思います。そこで、課題解決に向けた今後の事業展開を聞いてみると、

・高齢者の社会参加セミナーなどによる啓発をしていきたい

・企業の高齢者雇用ニーズの開拓をしたい

・ボランティア活動などの実践例紹介していく

と何とも課題の本質を理解していない回答でした。先ほど申し上げた地域活動の担い手不足も、地域ごとの事情があり、単純に実例紹介で解決する話ではありません。また企業と高齢者の現状を把握しないことにはマッチングの課題は解決しません。今のままでは、何のための事業なのか分からなくなってしまいます。課題に対する解決策が見いだせていない印象を受けるので、再度、今後のモデル事業に対するビジョンを聞いてみました。

・短期的な課題(広報の強化、PRなど)

・長期的な課題(企業の高齢者雇用に対する意識の醸成など)

・モデル事業をしっかり検証をしながら全市展開に向け進めたい。

との回答でした。このモデル事業を進めるのは、行政側が現状分析をしっかりと行って、何が課題なのかを把握することからしなければなりません。そして、その解決策としてこの事業で何をすべきかを考える必要があります。私は少なくても今の状況のままで、このモデル事業の広報を強化しても、現状の課題の解決には結びつかないと思います。先ずは、行政の意識改革、組織改革からしていかないと真の市民サービスへと繋がっていかない気がします。

この記事を書いた人