4/24横浜市会基本条例の制定に関する調査特別委員会報告

横浜市会では4月24日に議会改革について参考人(講師)を招きお話を伺いました。

講師は、元全国都道府県議会議長会 議事調査部長 野村 稔氏です。

主な内容は、以下の通りです。

1 議会改革の必要性と進め方

(1)議会改革の必要性について

(2)議会改革の進め方

(3)議会・議員の役割の基本について

① 議会(批判監視者)があって、行政の公平、公正、能率性が確保される。

② 住民のために政策論争をする。

③ 施策の優先順位を提言する時代となった。

④ 会派内での政策論議を十分行う。

⑤ 議員定数の減少は、住民意思の反映が低下、行財政改革の中心ではない。

⑥ 住民は、議会の活動を十分知らないので、議員の評価が低い。

2 本会議関係の改革

(1)長の選挙の後遺症(与党・野党意識)を薄める。

(2)議会政治には、妥協が必要である。(多数決原理)

(3)議会の運営を住民にわかりやすいものに改め、審議の充実と効率性を確保する。

(4)文書質問制度を設ける。(会議規則改正)

(5)市政の重要問題が生じたときは、議員派遣により対応を示す。

(6)議員は民間人であるから、行政改革の具体策を提言する。

(7)長の審議会の委員になることは、長の知恵袋になり、議会での審議が鈍化するので、原則として委員にはならない。

3 委員会関係の改革

(1)戦後の議会は委員会中心なので、委員会での論議を充実する。このため、委員の任期を長くする。(昭和22年の地方自治法制定のときは議員の任期と規定されていた。)

(2)常任委員会の所管事務調査を活発に行い、市政の現状、問題点、対応策をまとめ、必要に応じ本会議へ報告し、議会広報に掲載する。

(3)委員会における重要議案の審議では、参考人制度を活用し外部の意見を聴く。また、必要により委員派遣により現地を見る。

(4)常任委員会は、閉会中の継続審議事件を多く議決し、突発事件に対応できる体制をとり、委員会を開いたときは、その要旨を「議会だより」の臨時号で配布する。

他の地方団体で起きた事件を「よそごと」として見逃してはならない。

(5)委員派遣では、次の事項に留意する。

① 視察の目的を明確にする。

② 事前勉強を行う。

③ 報告書を議長に提出(説明内容と委員の意見を記載)する。

④ 本会議や委員会の審査に活かす。

4 予算・決算の改革

(1)予算編成前に議会の要望事項(政策)を長に提言する。

(2)予算案の審議では、住民に必要であるなら修正の動議または組み替え動議を出す。

それまでやる必要がないときは、議会の意見を付帯決議で明示する。

(一般の議案についても同様)

(3)決算審議を予算と同様に重視し、その成果を付帯決議で明確にする。不認定では議会の意思が明確にならない。

5 意見書の改革

(1)直接的な利害関係のある事項を除き、外交関係の意見書は、国の内外政策に影響するのでなじまない。

(2)実現の状況を調査し、住民に伝える。

6 請願・陳情の改革

(1)請願を採択したときは、実現させる努力をする。陳情も住民の要望として重視する。(取り扱いの基準を決める。)

(2)必要により請願者や関係者を参考人として出席を求め、また、委員派遣で現場を見る。

(3)特に不採択の場合、詳細な意見を付け、請願(陳情)者に通知する。

(4)実現の状況を調査し、請願(陳情)者に通知する。(随時)

7 住民との関係での改革

(1)過去1年間の定例会、臨時会での議員や会派が提言した事項を執行機関の部課別にまとめ、当初予算や条例等の措置状況を審議資料として提出を求める。

(2)定例会の招集月日を特定する。傍聴者を多くするため、議長が市内の各種団体に議会傍聴を活動の一環に加えるよう働きかける。

(3)議会単独による住民報告会ではなく、執行機関との合同による報告会を行う。(住民は議会と執行機関を分けていないこと。また、両者の活動がわかる。)

8 議員の位置づけと処遇

(1)昭和22年に制定の地方自治法によると、議員は他に職業を持って活動するものとしていたため、「報酬」の支給となった。報酬は、生活給ではない。しかし、現在、議員の活動は専業化しており、他に職業を持つことは困難となった。

(2)平成24年3月に総務省が発表した「地方財政の状況」(いわゆる地方財政白書)によると、都道府県と市町村を合計した平成22年度決算の歳出総額は、約95兆円であり、このうち議会費は、4,019億円(全体の0.4%)であり、極めて小さい。

行政改革は、99.6%を使用している執行機関の方で行わねば効果を上げることができない。

(3)議員の活動が常勤化し、これに見合った報酬を支給しなければ議会を充実強化することができないので、議員を「公選職」と位置づけ、議員が後顧の憂いなく活動するためには、現在の「議員報酬」を「地方歳費」(生活給)に改める必要がある。

(4)議員報酬の改定については、特別職報酬審議会の答申を得ることとされている。

9 議会事務局の強化

(1)特に情報、調査部門を充実する。

(2)法制担当職員の充実が困難なときは、併任とする。

(3)会議録担当職員を養成する。

10 最近注目されている議会改革についての私見

(1)議会基本条例

① 議会基本条例制定は、議会のあり方の出発点であるにも関わらず到着点のようなイメージがある。議会や議員のあるべき姿と議会運営の現状が混在しており、住民は制定された基本条例を見て、このようなこともやっていないのかとの疑問と誤解を持つ。

② 議員は特定の地域の問題だけではなく、当該団体全体のことを対象に活動すべきであると規定しているが、これでは地域代表として活動してきたと誤解されるのではないか。

③ 議員間の自由討議を規定しているが、実施は困難である。議員を補佐するシンクタンクともいうべき議会事務局が充実していないことによる。(全国共通)

④ 反問権は、議員内閣制における党首討論であるので、二元代表制の地方議会にはなじまない。(三重県議会の基本条例制定で、議員は規定を主張したが、学者から異論が出たため規定していない。)

(2)通年議会

地方議会は、委員会中心の論議、審議となっているので、いつでも本会議を開くことができる通年議会制を採用する実益は少ない。

通年議会は、執行機関を議会に釘付けにし、行政事務や住民サービスの低下を招く。

通年議会よりも委員会の継続調査、臨時会の招集請求の方が効果的である。

(3)報酬日当制

経費(報酬)節約のように見えるが、当該団体で大きな事件が発生したときは、経費増になる。

このような、お話を受け、今後、委員会で議論を進めて参ります。

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