大牟田市の空き家の活用を学ぶ!

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空き家の活用と地域包括ケアシステムについて他都市の事例を学んできました。今回、伺ったのは九州の中部に位置する大牟田市。先ずは大牟田市ってどんなところなのかを少し記します。

西は有明海に面し福岡県の自治体では5番目に人口が多い街です。かつては三井三池炭鉱の石炭資源を背景とした石炭化学工業で栄え、1960年(昭和35年)には最大人口21万人を誇りましたが現在の人口は12万人を下回っています。

エネルギー革命などにより石炭化学工業が衰退し、同炭鉱が1997年(平成9年)3月に閉山しました。その後は廃棄物固形燃料(RDF)発電施設を中心とした環境リサイクル産業などの新興産業(エコタウン)や、立地条件を生かした大牟田テクノパーク(工業団地)への企業誘致などに力を入れています。

全国的にも炭鉱の町は衰退とともに産業シフトを行ってきましたが、シフトしきれずに財政破たんし有名になったのが夕張市です。ここ大牟田市に関しては、比較的他の産業基盤が整っていたため、産業シフトをすることが出来たものの、地方都市が抱える人口減少や都市部への人口流出、高齢化といった喫緊の課題があります。

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そのような背景を持つ大牟田市では、空き家が急増すると共に、高齢者、障がい者、低所得者、離職者なども増加傾向にあり、住宅確保要配慮者が生活の基盤となる住宅を円滑に確保できていない問題も発生しています。

そこで大牟田市では住宅と福祉の連携が必要と考え、空き家を活用した地域包括ケアと住まいを繋ぐ取り組みを行っています。

平成25年の住宅・土地統計調査によると、国内の総住宅数は6063万戸で空き家数は820万戸(13.5%)となっています。大牟田市の場合の空き家数は約1万戸(16.2%)で全国平均よりも多い状況です。ちなみに横浜市はと言うと、空き家数は1万7800戸(10.1%)です。

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話は戻して、大牟田市では空き家の活用を模索するためにこの約1万戸の空き家の調査を行いました。

1次調査ではマンションなどの集合住宅を除く全ての戸建て住宅を対象に外観による空き家の実態調査を民生委員に依頼しました。

民生委員の皆さんは地域に精通した方ばかりなので、確かにどこの家が引っ越したとかよく知っているハズです。しかし普段からたくさんの役割の担って頂いている民生委員さんに依頼できたってところが凄いです。

民生委員さんの協力を頂いた結果、3千戸の実質空き家が存在することが分かりました。

次にこの3千戸を対象に老朽度等の2次調査が行われました。しかもその調査を行ったのは地元の高専の建築学科の生徒さん達でした。ちなみに調査費は60万円だったそうです。

2次調査ではA(そのまま使用が可能な状態)、B(若干修繕が必要と思われる)、C(使用するにはかなりの修繕費がかかる)、D(損傷が著しく倒壊などの危険がある)の4ランクに分類しました。そのうちに実質使用が出来そうなA・Bランクの空き家が約1000戸あることが分かりました。

しかし空き家情報や所有者に関しては個人情報であり、行政から空き家所有者への接触は難しい状況です。そこで活用可能な空き家のエリアを中心に戦略的に「空き家所有者向け無料相談会」を開催しました。

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その中で相談に訪れた空き家の所有者が地域のために活用して欲しいとの意向でモデルプロジェクトを立ち上げ、実現したのが「サロン田崎」です。

ここでは、地域の方々が集い、音楽の演奏会を行ったり、料理教室を行ったりと活用されています。

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現在、全国的に「空き家」が原因で様々な問題が発生していることから、その対策に取り組む必要性を踏まえて「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、横浜市では宅建協会や弁護士会等と連携して空き家に関する相談窓口を設置しています。

一般的な流通や賃貸だけではなく、大牟田市のように空き家を地域で活用する仕組みについても構築していく必要があると考えています。

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