「なんばひろば改造計画」は横浜の公共空間の活用と何が違うの?

「なんばひろば改造計画」の話に入る前に、ニューヨークのタイムズスクエアについて触れておきます。かつてのタイムズスクエアは、車道に溢れるほどの歩行者が居て、大変危険な状況でした。そこで古くから存在していた道路(ブロードウェイ)を廃止し、そこを広場にすることでタクシーを空間から締め出し、歩行者にとって安全な空間をつくり出しました。当初、様々な不安や問題が指摘されましたが、結果的には周辺の不動産価値は上昇し、歩行者通行量も、周辺の小売店の販売量も増加しました。この一連の過程において、特筆すべきはその財政効果です。まさに公共空間を「稼ぐ公共」に生まれ変わらせました。
この「なんばひろば改造計画」は、「稼ぐ公共」になるかは別として、エリアの価値を上げることを目的に、現在の車道を歩行者空間(憩いの場)へと変えていこうといった取り組みなのです。

大阪ミナミの中心に位置する「なんば駅前ひろば」は、多くの国内外の来街者が行き来する場所ですが、歩道が狭く、放置自転車も多く、また空間の大半を車両で埋め尽くされている状況でした。そこで2008年に地元の発意で空間の再編検討が始まり、2011年に周辺の町会、商店街、企業等の27団体が参加し「なんば安全安心にぎわいのまちづくり協議会」が設立されました。2020年度からは、荷捌き運用などの交通形態、歩行者空間づくりによる安全性改善の検討が具体化され、2021年に社会実験が実施されました。

道路空間を廃止し、国内外からの来場者が交流できる空間を生み出すとともに、民間による道路空間の利活用を推進することで、新たなにぎわいを創出する社会実験では、検証項目と各項目の達成目標が設定され、可能な限り数値化して評価できるようにしました。

そして社会実験では、大方問題無いことが確認され、国内外の来街者からは約9割の方が「とてもよい・よい」と評価しました。

「なんばひろば」では、2025年の完成を目指して検討が進められていますが、今後、この公共空間維持していくのか?といった課題が残っています。エリアマネージメントにはBIDをはじめ、様々な手法がありますが、組織づくりだけでなく、維持していくための財源ねん出方法、公益性、収益性のバランスなど、今後どのように整理していくのか着目しています。

横浜市においても、道路空間の活用として日本大通りの歩道空間を広げて社会実験が行われていたり、東横線廃線跡地遊歩道やみなと大通り及び横浜文化体育館周辺道路においても活用の検討が進められていますが、地域課題の解決が最初にあったというよりは、公共空間の活用がしやすい場所だったからという意味合いもあり、地域主導による課題解決のための公共空間の活用といった事例ではありません。

公共空間の活用と継続性を考えると、やはり地元主導であることが重要です。地元主導と持続性の関係は、公益性だけでは難しく、最終的にはエリアの価値が上がり、不動産価値
の向上や来街者増加で商業的価値の向上を図るなど「稼ぐ公共」にしていかなければなりません。横浜市では、行政が利益誘導とも思える公益性にどこまで踏み込むべきか?尻込みしているようにも見えます。

横浜市は、既に人口減少が始まり、高齢化や公共施設の老朽化への対応など、公共サービスの需要は益々増える一方、市税等の担い手である市民人口は減少が予想されており、こうした厳しい財政状況の中、唯一の望みは、横浜市は公共空間をたくさん保有しているということなのです。今後は、この公共空間をどのように活用していくのか?がとても重要なポイントとなってきます。横浜の経済が活性化し、市民の暮らしが充実できる公共空間の活用であれば、「稼ぐ公共」について私は積極的進めるべきと考えています。

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