横浜は企業版ふるさと納税に着目すべき!

地方創生応援税制についてです。一般的には「ふるさと納税」と言われていますが、これはそもそも国の制度の建て付けが悪いことが本質的な課題ですので、今日は、未だ全国の地方自治体が本質的な理解をしていない「企業版ふるさと納税」について提言していきたいと思います。そこで先ず、

(1)「企業版ふるさと納税」の概要と本市における実績について鈴木政策局長に伺いました。

《政策局長答弁》

企業版ふるさと納税は、国が認定いたしました、自治体の地方再生プロジェクトに対して、その自治体の区域外に本社がある企業が寄付を行った場合に、法人関係税から寄付額の最大9割が税額控除される地方創生応援税制でございます。本市の実績といたしましては、2年度は1事業について1企業から1,000万円、3年度は3事業につき11企業から1,450万円、合計2,450万円の寄付をいただきました。4年度は継続案件で2事業、新規4事業の募集を行っております。

一般的な理解は、地方公共団体の公益的事業について、民間企業の社会貢献的な観点より、お金を寄付してくださいという理解なのです。

しかし企業の寄付額の9割は控除となったとしても、1割は企業側の負担になります。企業に対し「CSRの一環でお金を出してください」では限界があります。しかし、その一方で民間企業は、行政の持つビックデータの活用や、公共フィールドでの実証実験など、ビジネスに繋がる取り組みをしたいと思っています。

例えば、横浜市が解決したい課題を提示した時に、その社会課題を解決するサービスを開発したいと思っている企業が居て、その企業が開発費を横浜市に寄付して、行政と企業が一緒になって課題解決するサービスを構築することができるなら、横浜市は、タダで課題を解決できますし、企業は9割控除ですから1/10の開発費で新たなサービスを構築することが出来るといったWin-Winの関係がつくれるのです。

内閣府の見解では、企業版ふるさと納税で開発したサービスは、企業が寄付した自治体との間でインセンティブなビジネスをすることは出来ないけど、開発したサービスを企業が他都市に売り込むのは問題ないとのことなのです。要するに企業は1/10の開発費でつくったサービスを全国に販売できるのです。この企業版ふるさと納税の趣旨を行政が理解できるか?が重要となります。そこで、

(2)本市の課題や取組を積極的・具体的に企業に発信することが、企業版ふるさと納税を活用する鍵であると考えますが、伊地知副市長の見解を伺いました。

《伊地知副市長答弁》

本市では、これまでも行政課題を発信して、企業と対話しながら解決策を導いていく「テーマ型共創フロント」を通じまして、公民連携による市民サービスの向上に取り組んできたという実績がございます。今御紹介いただきました企業版ふるさと納税の活用に当たりましても、課題や解決の方向性を具体的に発信することで、企業とのマッチングの可能性が高まるということはあるというように思っています。今後、専門のウェブサイトでの情報発信や、横浜への貢献に意欲のある市外企業への働きかけを進めていくということが必要だというように思っています。

更に言うなら企業版ふるさと納税には「人材派遣型」というメニューもありまして、企業は、人件費相当額を自治体に寄付したものと扱われます。まだ、全国的に活用実績が少ないようですが、これは専門的知識・ノウハウを持つ企業の人材を地方自治体へ派遣することによって、地方創生の充実・強化を図ることを目的としたメニューなのですが、企業は寄付と人材派遣を併用することも可能ですので、自治体は新たなサービスを構築するのに、企業のお金と人材を同時に活用することが出来ます。そこで、

(3)人材派遣型の企業版ふるさと納税の活用の可能性について、伊地知副市長の見解を伺いました。

《伊地知副市長答弁》

今先生が御紹介いただきましたように、自治体側にとっては、専門的な知見を有する民間人材を、人件費を負担することなく受け入れるということができますので、地方創生の取組を一層充実させることができるということになっております。また、企業につきましては、税の軽減や、あるいは金銭的支援によらない地域貢献、あるいは人材育成などのメリットもあるというように言われております。ただ一方、全国的にも事例がまだ少ないという状況もありまして、それはおそらく任用上の課題とか、そういう点についてまだきちんと整理できない部分があるのかなというように思っておりますので、ここは様々な角度から検討しなければならないかなと思っているところでございます。

先ほど、本市のふるさと納税の実績を伺いましたが、本市の予算規模を考えると、「企業版ふるさと納税」はもっと活用されてもよいのではないかと思います。そこで、最後に、

(4)「企業版ふるさと納税」の活用を強化すべきと考えますが、市長に見解を伺いました。

《市長答弁》

「施策の推進」と「財政の健全性の維持」の両立を図りながら、中期計画の施策を着実に進めていくためには、あらゆる機会を生かした財源確保の取組が必要になります。今後、取組体制を強化していくほか、各区局が新規事業を立案する場合は、企業版ふるさと納税の活用を積極的に検討するなどして、市としての活用を強化してまいります。

この仕組みは、企業版ふるさと納税を特定財源として扱おうという話で、人材派遣型はみなし財源として、しっかり評価すれば良いのです。「ふるさと納税」のような自治体間の奪い合いではなく、他都市と競合しない「企業版ふるさと納税」に注力することが重要です。

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